東京高等裁判所 昭和39年(ネ)1491号 判決
被控訴人信州建材はその商品のタイルを控訴人が請負つた前記プール建設工事用に買入れたい旨森田から申込を受け、担当者が前記事務所に赴いたところ、森田から前記肩書つきの名刺を交付されたこと等より同人が控訴人の駐在所長として控訴人に代わつて資材の現地買付けをする権限を有しているものと信じ、他面信用調査の結果控訴人が信頼できる業者で松本市に駐在所を開設していることを知つたので、森田の申込を承諾し、前記のとおりタイル及び追加注文の防水剤を代金は引渡と同時に支払を受ける約定で前記事務所に送付して売渡したものであり、なお右商品送付の都度同所において受取書に事務所備付の前記ゴム印の押捺またはこれに代わる「三共」という記号の書入れを受けていたこと等の事実がいずれも認められる。
(証拠)中叙上認定に牴触する部分は前示各証拠と対比して採用し難く、他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。
叙上の各認定事実よりすれば、控訴人は森田が前記事務所の表示として控訴人の商号を冠した「三協工業株式会社長野県開発センター」という名称を用い、且つ同開発センター所長の肩書ある名刺を使用することを許容し、同人をしてこの名称の下に、同県下で控訴人が受注した請負工事に関し、資材業者との交渉および代金受払の事務をも処理せしめ、もつて右工事用資材等の購入につき森田が控訴人の代理人であるかのような外形を作り出したものであり、前記被控訴人四名はいずれも右外形を信じて同人と取引をなしかつかよう信ずるにつき善意無過失であつたものと認めるのが相当である。
したがつて控訴人は被控訴人山富産業とのセメント売買については代理人森田がその権限内においてなした代理行為によるものであつて当然本人としての責を負うべきであり、右被控訴人とのヒユーム管売買および他の前記被控訴人三名との売買については他人に代理権を与えた旨表示したものとして民法第一〇九条表見代理の規定によりその責に任ずべきである。
(奥野 野本 萩原)